教育内容

医学部1年

細胞生物学2コマ

  • 高山

核と遺伝情報
遺伝子の構造と機能、DNA複製、ゲノム、エクソン・イントロン、セントラルドクマ、RNA、転写・翻訳、スプライシング、転写調節など分子遺伝学の基礎を、一部高校生物の復習も含めて解説します。少しでも遺伝子に興味が湧いてくるようになれば幸いです。

遺伝子学全20コマ

  • 藤岡
  • 亀山
  • 高山
  • 三枝
  • 長尾
  • 務台

「細胞生物学」で学んだDNAを中心とした分子生物学の基礎をより深めるとともに、遺伝子情報の意味、遺伝子工学を理解するための基本事項から始まり、がん研究や遺伝子診断などの、医学における分子生物学の最前線の話題も交えながら講義を進めます。

分子医化学実習全16コマ

  • 生化学単位と共同担当:スタッフ全員

医師に必要な基礎的知識や論理的な考え方を習得します。分子遺伝ではPCR反応と制限酵素を用いたDNAの消化、アガロースゲル電気泳動、およびDNA塩基配列決定法を担当しています。

医学部2年

臨床遺伝学全10コマ

  • 藤岡
  • 高山
  • 病院遺伝診療部

遺伝性疾患・先天異常症について、細胞遺伝学から細胞分裂、配偶子、接合子、受精、性の決定、染色体レベルの遺伝、染色体異常の発生機序、染色体異常による疾患、各種集団における染色体異常の種類と頻度等を学び、臨床遺伝学から遺伝カウンセリング、出生前診断、遺伝子診断、遺伝子治療、家系図等を学びます。実習では染色体標本の読み方を学びます。

総合基礎医学2コマ

  • 藤岡

分子生物学・遺伝学の進歩により昨今実用化しつつある、セントラルドグマに直接作用する医薬品について、遺伝子導入ベクターを中心に、基礎医学的観点から横断的に学びます。

医学部3年

系別総合・腫瘍系1コマ

  • 高山

多段階発癌と家族性腫瘍、がんの遺伝子診断法について学びます。

医学部4年

画像検査診断系1コマ

  • 高山

遺伝子検査の基礎と応用、将来性と問題点について学びます。

医療系研究科

毎年度ではありませんが、分子遺伝学の講義と演習が開講されます。分子病態学群の学群講義も一部担当します。(Webシラバスをご参照ください)
講義では、現場第一線で活躍する諸領域のプレイヤーをお招きし、近年の”治療学としての分子遺伝学”について、基礎医学的知識(サイエンスとしての原理原則、介入標的、介入手法から、治療法開発には欠かすことのできない薬理学的視点、規制医学、周辺バイオ技術)から社会実装までを、横断的に学びます。

定期的行事

水曜セミナー(生化学単位と合同で)

毎週水曜日 10:00-11:00

M1号館 9F 大学院ゼミ室

場所は変更になることがあります

聴覚 in vivo研究合同ミーティング

隔週水曜 16:30-17:30

医学部棟 5F 分子遺伝学会議室

Zoomとのハイブリッド開催

不定期開催(外部の方も参加歓迎です)

聴覚基礎研究セミナー@相模原

過去の開催

第1回難聴遺伝子解析を中心とした聴覚基礎研究と今後の展望

務台 英樹

NHO東京医療センター臨床研究(感覚器)センター聴覚平衡覚研究部

2023.1.25

第2回シナプス形成分子cerebellin1と蝸牛シナプス病

藤川 太郎

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科

2023.4.26

第3回アミノグリコシド系抗菌薬による内耳障害に対するTGF-βシグナルの役割解明

新田 義洋

北里大学医学部耳鼻咽喉科

2023.5.24

第4回新規自己免疫性難聴モデルマウスの樹立とその解析

藤岡 正人

北里大学医学部分子遺伝学

2023.6.13

第5回処理する音の周波数に応じた聴覚神経回路の最適化戦略

山田 玲

北里大学医学部生理学

2023.7.5

第6回爆傷と蝸牛シナプス障害 ー病態解明と治療法開発の研究-

水足 邦雄

防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座

2023.8.9

第7回抗体に代わる分子認識分子:核酸アプタマーの選抜と応用

末吉 健志

北里大学理学部化学科 反応機構学講座

2024.9.25

講義 Q&A集

講義の後や試験前に受けた質問の中から、学生さん全体と共有したいものを書きとめました。 今後、興味ある質問があれば追加していきます。

遺伝子学

核酸って食べ物から補給できるんですか?

細胞を含む食品には当然核酸が含まれています。 ではそれがヒトのDNAやRNAに使われるのでしょうか。食品中の高分子のDNAは消化管から吸収されることはありませんし、 仮に吸収されたとしてもゲノムに組み込まれることはありません。問題はヌクレオチド、ヌクレオシドに分解されたものがDNA、 RNAの合成に使われるかという点です。少なくともヌクレオシドにまで分解されると小腸から吸収されます。 しかし実際摂取したヌクレオシドで組織の核酸に取り込まれるのはほんの一部であることがわかっており、 ほとんどはde novo(新規)生合成経路でアミノ酸からヌクレオチドは作られます。この部分の詳細は生化学で学びます。
ですから核酸サプリメントに過大な期待はできません。

シークエンス反応はPCRのひとつなのでしょうか?

最近の塩基配列決定法では、 PCRと同じようにサーマルサイクラーで温度変化を繰り返し蛍光標識された反応産物を増幅します。また、 ここでもちいるDNAポリメラーゼが耐熱性であることもPCRと共通です。しかしよく考えてみてください。 PCRではセンス(forward)プライマーとアンチセンス(reverse)プライマーで逆向きの合成反応を起こさせますが、 シークエンス反応では1つのプライマーで一方向の合成反応しか起こしません。 ですから反応産物は指数関数的に増加することはなく1次関数的に増えるだけです。 従ってこの反応はPCRと似て非なるものです。

真核生物にみられるエキソンとイントロンの存在意義は何ですか?

確かにどうしてエキソンとイントロンといった複雑な構造があるのか不思議ですね。
まだ明らかになっていない点が多いと思いますが、イントロンが除かれる(スプライシングという)際、 除かれ方に何通りかある場合があります。これを選択的スプライシングといいますが、これによって、 1つの遺伝子でも、複数の成熟mRNA、ひいてはタンパク質を作ることが出来ます。 出来上がったタンパク質の機能が異なることもあります。これで真核生物という生命体の複雑さを一部説明できるのかもしれません。
また、エキソンはタンパク質に翻訳されたときのドメイン単位であることが多いという観察から、 エクソン(= ドメイン単位)で組み換えることで、新たな機能を持ったタンパク質を作ってきた進化の軌跡かもしれません。
更に、イントロンの中に遺伝子の発現に影響を与える重要な塩基配列が存在することもあります。

臨床遺伝学

X染色体の不活化について質問です。 X染色体は一つを残して発生早期に不活化されますよね。そうだとしたらターナー症候群(45,X) やクラインフェルター症候群(47,XXY)で症状がでる理由がわかりません。なぜなら不活化されるXをXとすると、 正常女性は(46, X X)となり、ターナー症候群と実質同じになり、クラインフェルター症候群は(47,X XY) となり、正常男性と変わらないような気がしますが。

X染色体の不活化といって も染色体全域で起こるわけではありません。性染色体の長腕、短腕のテロメアには、擬似常染色体領域(pseudoautosomal region)といってX、Yで共通の配列をもつ領域があり、ここにある遺伝子はX染色体の不活化を受けません。 多分こういった不活化を免れた遺伝子の産物の量の違いが症状となって現れるのではないかと考えられます。

ロバートソン転座をもつ保因者を均衡型保因者と書いてある書物があります。 実際は転座に係わった2つの染色体の短腕が失われているのにどうして均衡型というのですか?

ロバートソン転座は端部着糸型染色体間で起こります。 これらの染色体の短腕はサテライトと呼ばれ、リボソームRNAをコードしています。 しかしリボソームRNAはサテライトを持つ複数の染色体がコードしているため、一部のサテライトが失われても症状は出現しません。 従って、厳密には染色体のわずかな減少があるのですが均衡型といってもいいのです。

遺伝子変異の記述法について教えてください。

こちらをご覧ください。